ストレッチ
目次
ストレッチで筋肉を伸ばすだけでなく、縮める方法を使ったほうがいい場合もある
ストレッチの目的
ストレッチは、硬くなった筋肉を伸ばしたり、引っ張ることによって、筋肉の緊張が緩和され、その結果血液の流れの滞りが改善されて、こり、痛みの緩和につながって、怪我の予防などに効果があるとされています。
でも、言うのは簡単ですが、上記したようなことを達成するには、かなりの知識をもってストレッチを行わないと、痛みの緩和、怪我の予防などの効果を出すことは難しいです。
単純に、深い理解もなく硬くなった筋肉をむやみに伸ばすと、首、腰の痛みがある人だと、まず症状を悪化させてしまいます。
ストレッチは“気”の流れを調整するもの
ところで、ストレッチは、ストレッチ体操という言葉があるように、体操のような感覚を持っている人が多いです。
しかし、私は、ストレッチは体の中を流れる“気”(エネルギー)の流れを調整するものだという感覚を持っています。
“気”と言うと、目に見えないですから怪しい感じがしますが、ストレッチでもマッサージでも”気”を意識してやると、結果が全然違います。
”気”というと、武術、ヨガなども本来”気”の流れを調整するものです。
でも、スポーツ化、体操化してしまい本来の目的から外れてしまっていますので、武術、ヨガなどをやっても健康にはつながりにくくなっています。
では、“気”の流れを調整すると、なぜ健康につながりやすいのでしょうか?
それは、”気”が体のすべてのものをコントロールしているからなのです。
ですから、ストレッチをやる時も”気”を意識してやると、こり、痛みの緩和、怪我の予防などにの効果が得やすくなります。
ストレッチの種類
現在は、背骨をボキボキするような荒療治は敬遠されるようになっているため、ストレッチのようなソフトな施術が広まってきています。
しかし、いくらストレッチがソフトで安全だといっても、やり方を間違えれば症状が悪化して長引くことになりかねません。
ストレッチには種類があって
・静的ストレッチ(スタティック)
・動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
の2種類です。
静的ストレッチ(スタティック)
静的ストレッチは、一般的に広く行われている方法です。
伸ばしたい筋肉の片方の端を固定して行います。
動的ストレッチ(スタティック)
動的ストレッチは、筋肉を固定せずに行う方法です。
例えば、ラジオ体操がそうです。
そして、極論を言えば、体を動かすことすべてが動的ストレッチということになります。
ですから、さあこれからストレッチをやるぞと意識しなくても体を動かすだけでいいわけです。
そして、特殊な方法として“気”(エネルギー)の流れを意識してやるストレッチもあります。
この方法は、非常に効果が高くて内臓が関連した症状にも対応できるものです。
尚、普通の静的ストレッチ、動的ストレッチの場合は神経に刺激を加える方法ですから内臓が関連する症状には効果は期待できません。
症状別のストレッチ?
ストレッチは、筋肉を伸ばす操作をするわけですが、肩がこった時は肩周りの筋肉をストレッチをし、腰が痛い時は腰周りの筋肉をストレッチするなどと、いわゆる症状別にストレッチをする人がいます。
と言うよりか、ほとんどのストレッチが症状別のストレッチかもしれません。
ストレッチは人気があります。
ストレッチを自分でしても他の人にしてもらっても気持ちがいいというのがその人気の理由でしょうか。
症状別のストレッチは効果が長続きしない
症状に合わせてストレッチをしてみても、体の状態にもよりますが、症状が慢性化している場合は、一時的に症状が軽くなることがあるだけで、問題が解決するわけではありません。
これは、ストレッチの技術が上手い下手とかの問題ではありません。
症状別にストレッチをするという発想自体が間違いなのです。
なんでもかんでも症状のある部分の筋肉を伸ばせばいいわけではありません。
もし症状のある部分に炎症がある場合は、症状を悪化させることになります。
確かに症状に合わせて筋肉を伸ばしたほうが、その場は症状の変化が早いですからストレッチの効果を実感しやすいです。
でも、その効果は長続きしにくいのです。
と言うのは、症状のある部分には症状の原因がないからです。
ただし、症状の原因のある部分にしっかりとストレッチをする場合は別です。
その場合は、ストレッチを続けていけば慢性の症状もだんだん症状が減っていきます。
ストレッチはたくさんの筋肉をやる必要はない
ネットでストレッチのやり方を公開しているサイトを見ると、部位別にやるというふうに書いてあるところが多いです。
部位別にストレッチをやるように勧めている人が、どのような考え方でそうしているのかは分かりませんが、基本的に人間の体は機械のように部品の寄せ集めではなく、体全体で1つですから、そんなにたくさんの筋肉を伸ばす必要はないです。
ストレッチをする基準は筋肉の痛みが軽くなることではない
では、どれだけの数の筋肉をストレッチすればいいのでしょうか?
体全体で4ヶ所の筋肉をストレッチすれば十分です。具体的に言うと、右腕一ヶ所、左腕一ヶ所、右脚一ヶ所、左脚一ヶ所の合計4ヶ所です。
左右の手足をそれぞれ一ヶ所づつを伸ばすわけですが、なぜこのようにするかの基準はあります。
その基準は、ある一ヶ所をストレッチすることによって、体がどのように変化するかということです。
つまり、一ヶ所ストレッチすることによって、どれだけ体のバランスが取れるかということです。
ある筋肉をストレッチしたら、例えば、その筋肉の痛みが軽くなったとします。
右脚にある筋肉の1つをストレッチしたら、右脚の筋肉の痛みが軽くなったという具合です。
でも、右脚にある筋肉の1つをストレッチして、体全体のバランスがあまり取れなかったとしたら、たとえ筋肉の痛みが軽くなったとしても、それは一時的な変化しかないことが多いです。
ですから、ストレッチをする場合、筋肉の痛みが変わるかどうかを基準にするのではなく、体のバランスが変わるかどうかを基準にしたほうが、後々の結果はいいです。
ストレッチはコツがいる
スポーツ選手や一般の人が運動する時に、筋肉のストレッチを運動の前にします。
運動の前のストレッチをやる目的は、怪我の予防ということになっています。
しかし、ストレッチをやっていても、アキレス腱の断裂、肉離れなどの怪我をやってしまうことがあります。
最近、近所の人がアキレス腱の完全断裂をやったそうです。
多分運動前にストレッチをやったと思いますが、詳しいことは聞いていません。
それはともかく、実際にアキレス腱を切ってしまったわけですから、ストレッチをやっていたとしても、しっかり出来ていなかったということでしょう。
運動前にストレッチをやって筋肉が暖まったとしても、ストレッチの本来の目的が達成出来ていなかったという事でしょう。
ストレッチの目的は、筋肉をしっかり緩めることにあります。
ストレッチによって、筋肉がしっかり緩んでいれば、そんなに頻繁にアキレス腱断裂や肉離れが起きるはずがありません。
しかし、現実にはそういった怪我が多いようです。
自己流のストレッチは効果が出にくい
ストレッチは、回数やったからといってコツをつかめるわけではありません。
やはり、ストレッチで効果を上げるには、それなりの理屈が必要です。
ですから、理屈が分かっていれば、ストレッチもそんなに難しくはないと思います。
怪我をする人が多いということは、ちゃんとした理屈を知らずに、自己流でストレッチを行っているということなんでしょう。
筋肉には、緊張の左右差があります。
緊張の左右差とは、簡単に言えば、片方が縮んで、もう片方が伸びているということです。
例えば、上腕に上腕三頭筋という筋肉がありますが、右側の上腕三頭筋と左側の上腕三頭筋では緊張に差があります。
ですから筋肉をストレッチする場合、その筋肉の緊張具合に合わせて、筋肉の伸ばし方に変化をつける必要があります。
つまり左右の筋肉に対して同じ伸ばし方でストレッチをしても、筋肉は多少血行が良くなって暖まりますが、しっかり筋肉が緩むまではいかないということです。
ですから、ストレッチをやってしっかり効果を出すには、上記したようなことに気をつけてやる必要があります。
ストレッチは体のバランスがとれるようにやると効果が出やすい
運動する時に、その前後にストレッチをやりますが、運動前のストレッチは、関節の可動域を高めたり、体を温める目的で行い、運動後のストレッチは、運動によって疲労した筋肉をケアする意味でストレッチをすることが多いようです。
そして、運動前のストレッチは動的ストレッチをし、運動後のストレッチは静的ストレッチをする人が多いです。
当整体院の考え方
私の場合は、それらの考え方とはちょっと違う考え方を持っています。
それは、整体的な考え方です。
整体的考えとは、体に対して何か働きかけをするのは、すべて体のバランスを取る目的でやるということです。
別に一般的に言われているストレッチをする必要はないと思います。
体のバランスを取れば、筋肉の緊張も緩和しますし、血液循環も良くなりますので、体も暖まります。
そして、運動のパフォーマンスも上がります。
運動後も運動によってたまった疲労も、体のバランスが取れるような体への働きかけをすれば、短時間に疲労が取れます。
その結果、普通のストレッチをするよりも、怪我をする確率が減少します。
この整体的な考え方で体に対する働きかけをすると、上手にやれば短時間で済みますし、効率の良い準備運動、整理体操になります。
ですから、運動する時のストレッチは、有害だと言われるようなことは減ります。
スポーツ前のストレッチの是非
スポーツ特に練習や競技でよく走るサッカー、バスケット、陸上競技などの種目は、鵞足炎、オスグット病、腸脛靭帯炎、シンスプリント、足底腱膜炎など下肢の故障を起こしやすいです。
練習、競技の前にしっかりウォームアップをしたり、ストレッチをしたりします。
それにもかかわらず、下肢の故障を起こすのはなぜでしょう?
スポーツ前のストレッチは必要か
あるサイトで練習、競技前にストレッチをやると、かえって身体に負担になって怪我をしやすくなると書かれています。
確かに、ストレッチをやると体は暖まって血行が良くなり、ウォームアップにはなるでしょう。
しかし、ストレッチのやり方が悪いと、逆に筋肉が縮んで緊張してしまう場合もあります。
筋肉が縮んで緊張していると、練習、競技中に脚などに急激に強い力がかかり、筋や腱が引っ張られ損傷しやすくなります。
逆に、ストレッチをしないでウォームアップは、少し走ったりして体を暖めるだけにしたら、それが良かったのか怪我をしなくなり、パフォーマンスが上がった選手もいるようです。
ですから、なにがなんでも練習、競技前にストレッチをするべきだという考え方は改めた方が良いように考えます。
ただし、正しいやり方で行うならストレッチも有効でしょう。
もちろん、スポーツをやって下肢の故障が起きるのは、練習前、競技前のストレッチだけが原因ではありません。
その時の体調、予期せぬアクシデントなどが下肢の故障を起こす原因になりえます。
練習や競技に差し支えるような体調の不良でしたら、練習を休んだり競技に出なければ下肢の故障は起こしません。
しかし、練習、競技に差し支えることがないような少しの体調不良でしたら、無理して練習、競技をやります。
そうした時は、微妙にフォームがくずれていますので、体調万全の時と同じようなパフォーマンスをしようとすれば、どうしても筋肉などに負担がかかり怪我をしやすくなります。
ストレッチもやり方によってまったく効果が違う
肩が凝ったり、腰が痛いということで、自分でストレッチをやる人は多いです。
でも、ストレッチをやっても、なかなか肩こり、腰の痛みに変化がないということもあるようです。
体の仕組みの勉強をすれば、ストレッチで効果が出るようになると考えていると人もあると思います。
しかし、そんなに簡単ではありません。
確かに、肩こり、腰の痛みでも軽い症状でしたら、ネットで出回っているストレッチの方法やストレッチ教室でやり方を習ってストレッチをやれば、症状が改善するかもしれません。
症状がこじれている場合、ストレッチも普通のやり方では効果が出ない
ただ、普通のストレッチのやり方では、症状が改善しにくい場合いもあります。
それは、肩こり、腰痛の症状がこじれている場合です。
そういう場合は、ストレッチをやればやるほど、肩こり、腰痛の症状が悪化していく可能性もあります。
それに、気づいてストレッチをするのをやめれば、肩こり、腰痛の症状が悪化する可能性が少なくなると思います。
薬を飲むのと同じ理屈です。
薬を飲む場合も、体に合わない薬を飲み続ければ、どんどん体は悪い方向に向かいます。
ですから、ストレッチをやってみて、自分の体に合わないなと感じたのなら、そのストレッチの方法をスパッとやめられるのが賢明かと思います。
ところで、当整体院で行っている施術法も基本的には筋肉、筋膜を伸ばしたりする方法です。
その方法を工夫して、効果が出やすいやり方にしているだけです。
ですから、一般に行われているストレッチの延長線上にあると言っていいでしょう。
ストレッチで筋肉を伸ばすだけでなく、縮める方法を使ったほうがいい場合もある
ストレッチは、有害だという説がありますが、正しいストレッチの仕方をすれば、それほど有害ではないです。
その前に、ストレッチをする目的をはっきりさせておく必要があります。
それは、硬くなって縮んでしまって伸びにくくなった筋肉を、正常な長さの筋肉に近づけることです。
筋肉の長さを正常にするのにはストレッチが向かないことがある
ですから、筋肉を正常な長さに近づけるための方法として、ストレッチを行うことが必ずしも最適とは限りません。
と言うのは、筋肉のストレッチだけをやっても、筋肉の長さが変化しないことがあるからです。
筋肉のストレッチは、筋肉を伸ばします。
しかし、筋肉に痛みがある時は、ストレッチを行っても筋肉を正常な長さに近づけることが難しくなります。
ですから、そういったケースでは、痛みがある筋肉を伸ばすのではなく、最大まで縮めるという方法を行った方が良いかもしれません。
その方法は、ストレイン・カウンターストレインと呼ばれる方法です。
この方法は、略してSCSと呼ばれています。
このSCSは、元々アメリカのオステオパシードクターのローレンス・ジョーンズという人が考案した方法です。
筋肉を伸ばすのではなく、縮めるという方法ですから、まったく逆のやり方です。
この方法でも、ストレッチと同じ効果が得られます。
と言って、このSCSですべて目的が達せられるわけではありません。
ストレッチをやった方がいい場合もあります。
要は使い分けすることです。
カウターストレインのやり方
1.筋肉を楽な位置にもっていく
2.その楽な姿勢を約90秒間持続させる
3.約90秒経過したら、ゆっくり戻していく
1の筋肉を楽な位置にもっていくというのは、ばくぜんとしていて分かりにくいですね。
では、肘が曲がったままになってしまって、まっすぐに伸びないという状態を例に上げて説明します。
肘が伸びないのを伸ばす方向に操作することは、上腕二頭筋を伸ばしますので、上腕二頭筋のストレッチになります。
逆に、余計肘を曲げる方向に操作するのは、上腕二頭筋を縮めていますので、カウターストレインということになります。
肘をゆっくり曲げていくと、上腕二頭筋が一番緊張が緩みやすい位置があります。
その位置に止めておいて、首をゆっくりと左右に回してみると、首の回り方が右と左で同じように回ります。
つまり、首の回り方を左右で比較することによって、上腕二頭筋が一番緊張が緩む位置を確認するわけです。
肘を曲げていって、筋肉が一番楽な位置を見つけるコツは、ゆっくり肘を曲げていった時に、前腕が行きたい方向についていくことです。
早く肘を曲げてしまうと、前腕が行きたい方向が分からないので、筋肉を楽な位置に持っていくのが難しくなります。
3のゆっくり戻すというのは、ばくぜんとしていますが、ミリ単位で戻していきます。
もし、早く戻した場合は、全く効果を得ることが出来ません。
ストレッチで症状が取れる?
肩こりストレッチ、腰痛ストレッチという言葉があります。
そのような言葉を聞くとストレッチをやって症状が取れるものだと思っている人も多いでしょう。
しかし、残念ながらストレッチで症状を直接取ることは難しいです。
確かに、肩がこった時などに首、肩、腕などの筋肉をストレッチすると、肩の周りの筋肉の緊張が和らいで、肩が軽くなることもあるかもしれません。
でも、筋肉の緊張が和らいで肩が軽くなるのは、一時的なものです。
ストレッチのやり方のコツが分かっている上手な人がやってもおそらく同じ結果になるはずです。
症状の原因になっている部分をストレッチしないと改善しない
そのような結果になるのには理由があります。
それは、こりが出ている肩には原因がないからです。
例えば、火事が起きて警報装置が鳴っているとします。
普通は、火が燃えているところに水をかけて火を消そうとします。
しかし、肩がこった時に肩の周りの筋肉をストレッチすることは、水をかけて火を消すのではなく、警報装置の音を止めるのと同じことをしているわけです。
警報装置の音を止めても、火はまだ燃えているわけですから、時間が経てばどんどん火の勢いは強くなります。
ですから火の勢いを止めて消火させるには、燃えている所に直接水をかけるしかないわけです。
肩こりも同じことです。
こっている肩の周りの筋肉をストレッチするのではなく、肩こりの原因になっている部分にストレッチする必要があります。
そうすれば、肩こりもだんだん症状が和らいでいくはずです。